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COVID-19点描 (10) 集団免疫閾値

 

人々の60%がCOVID-19に感染し免疫を獲得できれば感染拡大を阻止できるといった話がネット上を飛び交っていますが、この60%がどうやって計算されたのかについて暇つぶししてみました。

 

先ず、一人の感染者が何人に感染させるかという「基本再生産数(Basic Reproduction Number、R0)」なる数字が存在し、1を超えれば感染は拡大し、1未満なら感染は減少するというもので、COVID-19の基本再生産数はWHO公表のものが1.4〜2.5人(諸説あるようです)。感染者数が増えもしないし減りもしない状態を作るために必要な感染者の割合をSとすると以下の式1が成り立つ。

 

R0 x S = 1 ・・・ 式1

 

そこで、感染する人(S)は免疫を持たず、感染しない人(q)は免疫を持つとすると次の式が成り立つ。

 

S + q  = 1 ・・・ 式2

 

式1と式2から次の式が求められ、このqを集団免疫閾値(Herd Immunity Threshold、HIT)と呼び、R0が2.5人の時にqは0.6(60%)となる。

 

q = 1 - 1/R0 ・・・式3

 

さて、ここからが本題で、人々の60%が感染しないと感染拡大を阻止できないのだろうか、どうもそうではなさそうだということについて。

 

ウイルスに対する防御は自然免疫と獲得免疫の2段構え。自然免疫とは生まれつき持っている免疫で、血液中のマクロファージ(白血球の一つ)、好中球(白血球の一つ)、NK細胞(リンパ球の一つ)が抗原(細菌やウィルス)を攻撃し退治すること。獲得免疫とは抗原に対してヘルパーT細胞(リンパ球の一つ)の命令を受けたB細胞(リンパ球の一つ)が抗体を作り抗原を撃破し、その時の抗原の情報を記憶し再侵入に備えること。ただし、感染しても免疫が確立しない場合や免疫がすぐに弱くなってしまう場合があり、そうなると有効なワクチン開発は難しくなるし、感染拡大が収まらない可能性も出てくる。

 

自然免疫が上手く働けば、自然免疫だけで抗原を排除できる可能性があり、また最近の研究では自然免疫はさまざまな刺激によって訓練され、強化されることが分かったそうだ。例えば、結核ワクチンであるBCGは結核菌に対する免疫力だけではなく一般的な細菌やウィルスに対する反応能力を上げることが指摘されていて、COVID-19において日本をはじめとするBCG接種国の感染者や死者数が少ないことは、自然免疫力が高いことが理由かもしれない。

 

武漢市においてもクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」においても感染した人は全体の2割ほどで、その理由は、大きな流行が始まると人は接触制限をするようになったり免疫を獲得したりして再生産数が小さくなる(これを実効再生産数と呼ぶ)。接触制限などによって実効再生産数が1.2まで下がると、上の式3から集団免疫閾値は16.7%となり、これが実際に武漢市やダイヤモンド・プリンセスで起きていたことらしい。

 

東洋経済ONLINEによれば5月26日時点での実効再生産数は以下のグラフのように全国で0.68人であり、これが0となるには時間がかかりそうです。なお、東洋経済ONLINEが使っている式は実効再生産数 = (直近7日間の新規陽性者数 / その前の7日間の新規陽性者数) ^ (平均世代時間 / 報告間隔) 、平均世代時間(感染源の感染から2次感染者の感染までに要する平均時間)を5日、報告間隔は7日としている由。

 

実効再生産数

 

(この他の記事はこちらから検索できます)

 

| すうさん | 08:31 | comments(0) | - | pookmark |
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