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JR北海道の危機

 

腰痛による食っちゃ寝状態の暇つぶしとして積読本の中から取り出したのは、佐藤信之さんによる「JR北海道の危機」、副題「日本からローカル線が消える日」。これほどまでに本や章のタイトルから期待した中身と実際が異なる本は珍しいとの印象でした。例えば以下のように。

 

1. 第一章「溶けてゆくJR北海道」と第二章「JR北海道と地方消滅」に書かれている

  ことはJR北海道(およびJR各社)が抱えるローカル線問題を俯瞰できる情報では

  あるものの、「溶けてゆく」とか「地方消滅」といった劇的な内容とはなっていない

  と感じた。

2. 第三章「国鉄が作ったローカル線問題」には国鉄が進めた改革の詳細は書かれて

  いるが、国鉄が作ったのは飽くまで「ローカル線」であって、「ローカル線問題」は

  別に国鉄だけが作った訳でもないと感じたし、例えば、鉄道の歴史を綴る中で

  「1934年に山田線盛岡 - 宮古間が開業し列車が満員になるほどの利用があり、たんに

  交通が不便なために潜在需要になっていたことが証明された」と(少々分かりにくい

  日本語で)昔のことを書いても読者は誤解するだけではないか。

  今年3月の時点では、線路に並行する国道を走る急行バスに客を奪われ、宮古発盛岡行

  列車4本の内、午前9時26分発の次は午後4時9分という惨状を訴えなければ対策は

  打てない。

3. 第四章「国鉄時代の北海道の鉄道」に記載の路線、駅、列車情報からは鉄道の歴史を

  学ぶことはできるものの、JR北海道再建につながる情報にはなりにくそう。

  前書きには「車両や列車について細かく記述するが、これは鉄道会社にとって車両や

  列車が、いわば商品だからで、鉄道会社を論ずる場合には車両や列車まで踏み込む

  必要がある」と書かれているが、第四章45頁の多くが列車やダイヤに費やされている

  のはバランスに欠けるとの印象。

4. 第五章「国鉄解体とJRグループの誕生」では国鉄分割民営化の歴史とその後の動きが

  まとめられているが、生き残りの道は「高速化しかない」というのは正しくない

  ように思う。乗客が列車に求めることは乗車時間だけではないであろう。

5. 第六章「JR北海道が輝いていた時代」の61頁も第四章と同様、車両やダイヤの歴史

  満載で、佐藤さんの鉄道に関する博学多識ぶりには驚きますが、窮状打開にどう

  繋げるかには触れていない。

6. 第七章「JR北海道はどこで道を誤ったのか」の「高速化より効率化を重視する戦略」、

  「空港輸送にシフトした札幌圏の路線」、「効率化による減便が進むローカル線」、

  「縮小を迫られた夜行列車」、「北海道新幹線の開業は何をもたらしたのか」、

  「サイドビジネスの展開」、「関連会社の再編とKitacaの可能性」の計7節には歴史、

  車両、列車、会社情報などが細かく書かれているものの、JR北海道がどのように道を

  誤ったのか、その誤りをどう正せばよいのかが明確には書かれていないように感じた。

7. 終章「JR北海道復活への提言」はこの本で一番肝心な部分と思うが、たったの4頁。

  提言内容は、JR貨物が支払う線路使用料の見直しとインフラを行政が保有する「上下

  分離方式」への切替えの2点のみ。国を動かしてこの2点を改善すれば事足りるのか。

  元いすみ鉄道社長鳥塚亮さんによるYahoo!ニュース「鳥塚亮の乗りたくなる鉄道、

  行きたくなる田舎。」には、これらに加えて観光客誘致に向けた地域住民、企業、

  行政の「頭の切り替え」の必要性が叫ばれていて、こちらの方が実効性の高い提言の

  ように感じる。

 

JR北海道の危機


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| すうさん | 08:23 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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